Discover 江戸旧蹟を歩く
 
 天王祭

  ○ 天王祭
  ○ 天王一之宮(南伝馬町)
  ○ 天王二之宮(大伝馬町)
  ○ 天王三之宮(小舟町)


天王祭

 江戸時代、天王祭の中でも最大の規模を誇ったのが、神田明神に祀られていた三伝馬町の牛頭天王三社の天王祭でした。
 大伝馬町、小伝馬町、南伝馬町の三伝馬町は、江戸幕府が江戸の道中伝馬役を命じたことに由来する町です。
 旧歴の6月5日〜8日が大伝馬町の天王二之宮、6月7日〜14日が南伝馬町の天王一之宮、6月10日〜13日が小舟町(当初は小伝馬町)の天王三之宮の祭りでした。
 天王社は現在、大伝馬町八雲神社(天王二之宮)、小舟町八雲神社(天王三之宮)と呼ばれています。
 天王一之宮の江戸神社は、変遷を経て、日枝神社に八坂神社として祀られています。

「江戸名所図会 神田明神社」

 江戸名所図会から「牛頭天王三社」部分の抜粋です。

   


天王一之宮(南伝馬町) 6月7日〜14日

「江戸切絵図」

 南伝馬町一〜三丁目が見えます。現在の中央通りの両側京橋一〜三丁目です。
 町名は伝馬役を命ぜられた高野新右衛門が慶長11(1606)年にこの地を拝領したことに因みます。
 昭和6(1931)年、南伝馬町は京橋一〜三丁目となり消滅しました。

  
 

「江戸名所図会 南伝馬町祇園会御旅所」

 南伝馬町二丁目には祇園会御旅所がありました。

  
 

「東都歳事記 南伝馬町天王神輿渡御之図」

 御輿が渡る橋には「一石橋」とあります。

  
 

「絵本江戸土産 牛頭天王」

 挿絵には「牛頭天王は江都に数社あり 大伝馬町 南伝馬町 小舟町 此三社は 神田明神の社内に鎮座まします 其他 浅草 御蔵前 品川 千住 小塚原町など いずれも六月を祭礼とす 実に 天王の祭ほど気味よく勇ましきものはなし 寔に江戸の花ともいふべし」とあります。
 南伝馬町の光景が描かれていると思います。

  
 

「南伝馬町天王祭礼」(歌川国芳 都立図書館蔵)

  
 

「江戸名所道化尽 十七 壱丁目祇園会」(歌川広景)

 「天王祭」の御輿が通一丁目の大通りを進みます。白木屋のまえに鳳凰の御輿が進みます。
 男たちは赤く「天」と記された扇子を手にしています。
 前行く人のほどけたふんどしを後の人が踏んで転んでいます。

   
 

<京橋二丁目交差点と明治屋>

 京橋二丁目交差点から京橋一丁目方向、京橋二丁目の明治屋

   
 

<江戸神社>(神田明神)

 明治時代に入り「一の宮」は須賀神社と改称されました。
 南伝馬町は山王神社の氏子となり、江戸神社は大正10年に南伝馬町持から神田市場組合の五ヶ町持となりました。
 昭和3(1928)年に秋葉原に移転した神田市場内に江戸神社が建立されました。
 平成2(1990)年12月、神田市場は大田区への移転により、市場内にあった江戸神社の神霊を神田明神にあった神輿庫を社殿にして鎮座しました。

    
 

<八坂神社>(日枝神社)

 明治18(1885)年2月に神田神社が火事に見舞われ、南伝馬町持の一の宮の天王社(改称により加賀神社)も焼失したことで、
 維新後、神田神社の氏子から日枝神社の氏子に変えられていた南伝馬町氏子らが、日枝神社境内に加賀神社の分霊を遷座し、
 明治19(1886)年7月、末社猿田彦神社内に相殿神として八坂神社が奉斎されました。
 一の宮の天王祭は、日枝神社内にある八坂神社の祭礼として行われることとなりました。
 文政3(1820)年奉納の狛犬と石燈籠は、明治34(1901)年に神田神社から移転されたものです。
 狛犬には「南傳馬町三町目」、燈籠には「天王宮」「南傳馬町」と刻まれています。

    

   


天王二之宮(大伝馬町) 6月5日〜8日

「江戸名所図会 大伝馬町御旅所」

 大伝馬町の御神輿のお休み処の御旅所です。
 挿絵には、「五元集 天王の御旅所を拝す 里の子の 夜宮にいさむ 鼓かな 其角」とあります。

  
 

「東都歳事記 六月五日大伝馬町天王御旅出の図」

 挿絵左下には「里の子の夜宮にいさむ鼓かな 其角」とあります。

  
 

<大伝馬町八雲神社>(神田明神)

  

(参考)「大伝馬町」(こちらで記載


天王三之宮(小舟町) 6月10日〜13日

 現在、天王祭は、小舟町天王祭だけが四年毎に斎行されています。
 堀留公園に御旅所を設え大神輿の渡御など盛大に行われています。
 浅草寺に小舟町の大提灯が奉納されていますが、
 江戸時代は、小舟町は諸国の産物が集まる荷揚場であり、商人は財をなし大いに繁栄していました。

  
 

「江戸名所図会 小舟町祇園會御旅所」

 挿絵には「五元集 祇園酉のかりやしつらふを 杉の葉も青みな月の御旅かな 其角」とあります。

  
 

「東都歳事記 小舟町天王御旅出の図」

  
 

「絵本江戸土産 牛頭天王 其二」

 挿絵には「褌に 金何両や 夏祭」とあります。

  
 

「日本橋小舟町川岸の土蔵」(東京府史蹟 大正8年)

  
 

「祭礼御興之図」(月岡芳年 文久2(1862)年 都立図書館蔵)

 天王三之宮では、日本橋魚河岸へ御興の渡御があると、数千本の団扇を用意し、自分の店の前を神輿が通ると、その団扇を撒き散らしました。
 「魚」「魚かし」「鰹」などの文字を書いた団扇が舞っています。金銭を入れた紙包みも多く舞っています。(東京都立図書館の解説を参照しました。)

  
 

<小舟町八雲神社>(神田明神)

    

(参考)「小舟町」(こちらで記載


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